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俊side
「…ただいま」
「お、おかえりなさい…」
「…何飲んでんの?」
「ぇ…、ビール?」
「・・・俺には?」
「あっ、ちょっと待ってて…」
「・・・ぶっ」
「まだいんのかよ…帰れよもぉ///」
「菜緒ちゃんの手料理食ったらな」
「は?!」
口をぽかんと開けて俺を見た智哉は、いろいろ考えてたことが全部台無しになったみたいな顔をしてバスルームに消えてった。
「…あれ?先生は?」
ビール片手に戻って来た菜緒ちゃんはなんか知んないけど必死で、こんな感じになるなら早いとこ一緒に住めば良かったんじゃんって思った。
「風呂。ほら、すっげー怒ってる」
風呂場の方から聞こえてきた音は、多分ボディソープかなんかを智哉が叩きつけた音。
「でも思い切ったね」
「…ん?」
「智哉と一緒に住むこと」
「…ぅん」
「不安?」
「…少し」
「まぁ…見なくていいもんも見えるかもしれないしね」
「…うん」
「でも、そーゆーのも含めて自分でいっぱいになって欲しいんだよアイツは」
「・・・ん…」
「応援してるからさ」
力なく笑った彼女の表情に、さっきまで余計な心配だったかなって思えてたことがまた、陰を作っていく。
「私…先生といたら、ドキドキして、息もうまく出来ないくらい…苦しくなるんです。…先生が、好きだから」
膝を抱えた彼女の小さな声の向こうで、シャワーの音が止まった。
「・・・だけど…同じだけ恐くて、いつも遠くにいる先生に…近づくのも、恐いんです…本当は」
そっと目を閉じて、膝の内側に口元を隠した。
「…遼といる時は、こんな気持ちになること…なかったから……
いつも…あたたかくて…、目と目を合わせるだけで…彼の想いも私のキモチも…通じる気がしたの。でも、先生とも…そうなれるはずって、そう…思いたいんです……」
そう思うとこから始めなよってけしかけたけど困惑する彼女の姿に、もしかしたらやり方を間違ったかもしれないと、昼間感じた嫌な予感があっという間に蘇った。
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