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菜緒side
最初は帰れとか言ってた先生もお酒がすすむにつれて機嫌はどんどんよくなって冷蔵庫の中のビールがきれた頃、焼酎をおっきなロックグラスに水みたいに注ぎ始めた。
「…あ?なんだおまえ女いんのか」
「智哉、おまえちょっと飲みすぎだぞ」
「やだねー女なんか興味ねぇみたいな顔してよー」
「…別にそんな本気の付き合いじゃねーよ」
「本気じゃないならなんですかぁ遊びですかい」
ひとしきり楽しそうに笑った先生は、あ゛ぁー…って溜め息を吐いてソファに横になった。
子供みたいな寝息を立て始めたのはそれからすぐのことで、先生が起きてめんどくさいことにならない前にと、川本先生はタクシーで帰って行った。
寝室のタオルケットをそっと先生にかけるともそもそいわせて寝返りをうつ姿が、小さな子供みたいで可愛い…
傍に座ってじっと…先生の寝顔を眺めてたら、余計な気持ちがまた顔を出しそうで静かに視線を落とした。
「…菜緒?」
「…ぁ。ごめんなさい、起こしちゃった?」
「…んー…ん、…いいよ」
先生の熱い掌がふわふわと頬を撫でる。
「…あー……なんか、すげぇ…うれしい。おまえずっとここにいんの?なぁ…」
お酒に潤んだ先生の目が、私がここにいることを喜んでる。
「もっと近くにおいで…」
後頭部を強く引き寄せられてそっと先生の上に跨ったら、すぐ唇が重なった…
先生の上がった息が唇をずらすたび
甘く…
熱く…香って
心が悲鳴を上げそうなほど苦しくなる。
「…菜緒」
「…ん」
「……菜緒、…智哉って呼んで」
「……ん、」
「ほら呼んで…」
先生と生徒な関係を心が越えられない。
好きなのにずっと越えられなくて、心が苦しい…
「……いつまで先生って呼んでんだよ…」
あの頃のまま
あの頃のキモチのままでいたい。
先生…そんな悲しい声で呼ばないで…
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