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エリーside
渡り廊下の掲示板に貼りつけてあったチラシをコソコソ破いてるのを、大ちゃんに見つかった。
「…なにしてんの」
「ぎゃ///」
高く結んだポニーテールを引っ張られて、檸檬色のシュシュがふにゃける。
「…ヘタクソなコソ泥みたいやな」
最近なんとなく避けてた大ちゃん。
どこにいても目立つ金髪はいつも綺麗な女の子達に囲まれてて、わざわざ自分から近寄らなければ私みたいなのが学校で大ちゃんと関わり合いになることはなかった。
「久しぶり?」
「…だね」
「あーぁ…こんなビリビリに破いて」
画鋲で止められたチラシの切れ端が残った掲示板を見て、大ちゃんが右手をんって出した。
「出しなっせ」
両手の中でぐしゃぐしゃになったソレを観念して渡すと、ひろげて見た大ちゃんはふへへって変な笑い方をした。
「花火大会ね…なるほどね」
「だって…///」
「こんなぐしゃぐしゃなん持ってくなよ」
大ちゃんに見られたのが恥ずかしくて唇を尖らせると、私をからかって『むぅ…』って同じ口の形にする大ちゃん。
…子供みたいな大ちゃん。
だけど大人な大ちゃん。
今は、菜緒さんの…大事な人。
大ちゃんの手の中にあるソレを諦めて背を向けた私に
「綺麗なのやるから後で取りおいで」
そう言って、ブルーのクロックスをペッタンペッタン言わせて階段を降りてった。
大ちゃんがいなくなった踊り場に、ふわ…っと残る大ちゃんの香水。
海の底の…
うんと澄んだ海の底の
綺麗な青いにおい…
その中に、お花畑の淡いグリーンのにおいが混じる。
大好きな菜緒さんの、優しい香り。
ちょっと懐かしいそのにおいに、遼ちゃんの傍にいた菜緒さんを思い出して、胸がしくん…と泣きたくなった。
菜緒さん。
今・・・笑ってるの…?
遼ちゃんの隣にいた菜緒さんは嘘みたいに綺麗で、お伽話のお姫様みたいに可愛らしくて、私…大好きだった。
あんなふうに今、大ちゃんの隣で菜緒さんは笑えてる…?
大ちゃんに新しくもらった花火大会のチラシを鞄にそっと入れた。
…なんて言おう。
花火大会あるらしいよって言おうかな。
一緒にお祭りに行けるんなら
早水さんの隣で花火が見れるんなら
私きっと、ずーっと早水さんばかり見てる。
きっと
ずっと
だけどそんな私の浮かれ気分は、カウンターに座ってる遼ちゃんとその隣の誰かの姿に一気にグレー色。
「…あからさますぎね?」
「・・・誰、そのひと」
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