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もうその後は、夢中になってそのドアを開けて…
「あのっ…」
「…ん?」
あの…
なん、だっけ……?
そう。
まずは…
「私、絵莉ってゆーんです、けど…。あの…、ぁの・・・」
衝動的に動いたものの、たった今見事に撃ちぬかれたばかりの心臓がバクバクいう音だけが聞こえて、カウンターに座った女の人がくすっと笑って私を見た。
「モテモテね」
「だろ?女子高生もまだまだイケるってな」
「ふふ…」
綺麗な女の人。
大人のお姉さんを目の前に、自分の子供っぽい行動が途端に恥ずかしくなった。
だけど…
「んで?あの…、の続きは聞かせてくんねぇの?エリーちゃん」
出逢って3分57秒。
「好き、に…なっちゃったみたいです」
「まじかっ!おまえ…なんつー羨ましい」
奥から出てきたのは、おじちゃんのようなお兄さんのような微妙な風体の店長さん。
「いやそれちょっとした変態発言だからね店長」
「なんでこんなひょろひょろしたのがモテんのかさっぱりわからん」
「つーか俺こんな貢献してんだからちったぁ給料上げてくれてもよくね?」
「のわりには片っ端から客の誘い断ってんのどこのどいつだよ」
「なにそれっ!?客に手ぇ出せって言ってんの?ビックリだわ…」
私の告白なんてまるでなかったことみたいに進む会話に、一世一代の告白がぷかぷか宙に浮く。
「良かったら隣、座らない?」
さっきの綺麗なお姉さん。
なんて素敵に笑う人だろうって思った。
真似しようにも…どうやったらそんな素敵な笑顔が作れるのか分かんなくて、女の人相手に初めてドキドキした。
「エリーちゃん、このお姉さんがオゴッてくれるってよ」
その人がエリーちゃんって呼んでくれるたび【絵莉】が世界で一番素敵な名前になっていく。
「そこは『俺がオゴってあげる』じゃないの?」
「誘ったのは菜緒でしょ」
「もー……ほんとケチなんだから」
『何にする?』ってメニューを広げてくれた手は真っ白で、キラッと光るラメラインの入った爪先に釘づけになった。
「エリーちゃん、甘いの好き?」
「はい…」
「じゃぁ透君にとびきり美味しいフローズン作ってもらおっか。…ね?」
「は、はい」
「おまえのオゴリでな」
「しつこいよちょっと」
口の端をきゅっと上げて笑いながら、ミキサーに苺をポンポン入れてく手元を見てると、一目惚れの恋の行方がもう見えてきて…
カランッと音を立てる氷と一緒に、私の恋もガラガラ音を立てる。
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