1523人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
彼の突然の行動に驚き、心臓が高鳴る。
背中越しに感じる早鐘を上げる心臓の音よりも、
私の心臓の音のほうが、ずっと早い気がした。
このままでは、成宮氏に聞こえてしまいそうで、
彼の手をすり抜け、その場にしゃがみ込んだ。
ど!どうしよう!
とにかく断らなくては!!
小栗に顔向けが!!
顔向けが出来ない!!
「...駄目です!!!成宮さん!!私には彼氏が!!」
と振り返ると、大分遠くのほうに居る成宮さんが、
私の声に気づき、振り返った。
朗らかに微笑み、手を小さく上げる。
「では佐藤さん。また。」
小さく手を振り、マンションのゲートへと進んでいく成宮さんを呆然と見つめた。
「......え?...もしかして....
からかわれ...たの?」
誰も居なくなったマンションのロータリーにポツリ残された私を、
冷たい木枯らしが撫でていった。
.
最初のコメントを投稿しよう!