Ⅱ.七年前の記憶

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彼らの〝今日〟から丁度七年前の話である。 当時は、この市にあるビルや建造物もまだ作りかけている途中で どこに行っても人ばかりの所だった。 今も氷沼は人ばかりだが。 それでも当時はなんというか親しみと言うか和みのような感情が溢れ出る場所となっていたんだ。 その日もいつもの通り大雨、それもただの大雨ではなく強風まで吹き付け 篠突くような雨であった。 こんな時に外に出ている者など一人もいない。 そんな悪天の中の一軒家は朝から賑やかだった。 ?「よっしゃあ!雨で学校休みだ!」 窓を見つめている少年が一人いた。 少年は右手でお気に入りの赤のシャーペンを得意のペン回しので誰に見せるでもなくくるくると回していた。 家の奥から声がする。 ?「ほら隼人、早く宿題やっちゃいなさいよ。お母さんお婆ちゃんの様子見てくるから家を出ちゃダメよ」 それだけ言い残すと産みの親である母は家を出ていった。 そう、この男は 市瀬隼人(イチノセ ハヤト) 当時10歳 茶髪でストレートヘアーの男だ。
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