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最寄りの駅に着き、お互い何も言わず
立ち上がる。
改札を抜け駅の入口で思案顔で
空を見上げる彼女。
僕は徐にスーツのジャケットを脱ぎ
彼女に頭から被せた。
驚いた表情を見せた彼女は
僕を見上げたまま動かない。
『マンション着いたら、傘貸すよ。で、送るよ、部屋まで。』
『いや、タクシーで…。』
『1メーター無い距離を?』
『でも…。』
『走るぞ。』
有無を言わさず、彼女の肩を抱き
雨の中を走り出す。
邪な心が頭を擡げる。
僕は疲れていた。
名前をつけることの出来ない感情に
振り回されることに。
壊してしまいたかった、
自由になりたかった、
それが例え自分のエゴだと解っていても。
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