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ポケットから鍵を取り出し、
素早くドアを開ける。
彼女の背中を押し、少し強引に玄関へ
押し込んだ。
後ろ手で鍵をかけると、
施錠の音が思いのほか大きく響いた。
彼女の肩が小さく揺れるのが見えた。
『タオル持ってくるから、上がって
待ってて。』
『ここで…いいよ?』
『寒いだろ?コーヒーくらい出す。』
『でも…。』
『怖い?』
『…そういうわけじゃ…ないけど…。』
『入って。』
水分を含んですっかり重くなった
スーツを乱暴に脱ぎ捨てる。
真新しいタオルを手に、リビングに
戻ると、所在なさげに立ちすくむ彼女の
目の前にタオルを差し出す。
雨を避けるためにかぶせたジャケットを
握り締め俯いたまま動こうとしない。
強引に手からジャケットを奪い、
代わりにタオルを手渡す。
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