20人が本棚に入れています
本棚に追加
買った本を右手に持ち、
受け取ったレシートと小銭は
無造作にコートのポケットヘ。
男性はゆっくりと歩き出した。
時計の針は閉店20分前を指している。
何気なく出入口のほうへ目をやると
先程の男性がゆっくりと体の向きを変え
歩き出すのが見えた。
自動ドアをスルリと抜け、男性の背中はすぐに見えなくなった。
ーー…見られてた…かな?まさか…ね?
思わず笑みが零れる。
あの男性は近いうちまたこの店に来る
という確信めいたものがあった。
「そろそろ、有線『蛍の光』にしますね。」
「ハーイ、お願いします。」
ーーまたの御来店を心よりお待ちしております。
最初のコメントを投稿しよう!