視線誘導の考察

8/8
前へ
/304ページ
次へ
買った本を右手に持ち、 受け取ったレシートと小銭は 無造作にコートのポケットヘ。 男性はゆっくりと歩き出した。 時計の針は閉店20分前を指している。 何気なく出入口のほうへ目をやると 先程の男性がゆっくりと体の向きを変え 歩き出すのが見えた。 自動ドアをスルリと抜け、男性の背中はすぐに見えなくなった。 ーー…見られてた…かな?まさか…ね? 思わず笑みが零れる。 あの男性は近いうちまたこの店に来る という確信めいたものがあった。 「そろそろ、有線『蛍の光』にしますね。」 「ハーイ、お願いします。」 ーーまたの御来店を心よりお待ちしております。
/304ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加