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「酒、弱くなったねぇ。」
つむじのあたりで聞き慣れた声がした。
「年には勝てませんから。」
足に力を入れ、体勢を立て直すと
わたしの肘の辺りを掴んでいた手が
ゆっくりと離れた。
「二次会、行かないんですか?」
「みんなに気遣わせるしね。」
「今日の主役なのに?」
「足元覚束ない人、放っておけない。」
目を伏せて自分の爪先を見ながら彼に
向かって深々とお辞儀した。
「…栄転、おめでとうございます。」
ゆっくりと顔を上げ、彼の目を見つめた。
「ありがとうございます。」
彼は丁寧に私にお辞儀した。
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