20人が本棚に入れています
本棚に追加
前後不覚になるほど酔っていたわけではなかった。
それでも半ば強引に彼の部屋に上がり込み、狭い玄関で彼に身体を預けた。
胸元にそっと額を押し付ける。
『恥、かかせないで…?』
触れる手はどこまで優しく、優しすぎてもどかしく泣きそうになる。
『優しくしないで。』
部屋は薄暗く、彼の表情は見えなかったが、息を飲むのがわかった。
彼は私の両手首を交差させ紐状のものでゆるく一つに纏めた。
私の身体を反転させ、背中に唇を落とした。背骨に沿って舌を這わせる。
自分の物ではない異物が侵入してくる感覚に肌が粟立つ。
右手は胸を辿りゆっくりと下腹部へ移動する。
声を堪えるために枕に顔を埋める。
泣き出したい衝動は拒絶か受容か。
一時の淋しさと快楽を共有する相手として、彼は私を真っ当に扱ってくれたと思う。
しかし、大きな誤算があった。
最初のコメントを投稿しよう!