not simple

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前後不覚になるほど酔っていたわけではなかった。 それでも半ば強引に彼の部屋に上がり込み、狭い玄関で彼に身体を預けた。 胸元にそっと額を押し付ける。 『恥、かかせないで…?』 触れる手はどこまで優しく、優しすぎてもどかしく泣きそうになる。 『優しくしないで。』 部屋は薄暗く、彼の表情は見えなかったが、息を飲むのがわかった。 彼は私の両手首を交差させ紐状のものでゆるく一つに纏めた。 私の身体を反転させ、背中に唇を落とした。背骨に沿って舌を這わせる。 自分の物ではない異物が侵入してくる感覚に肌が粟立つ。 右手は胸を辿りゆっくりと下腹部へ移動する。 声を堪えるために枕に顔を埋める。 泣き出したい衝動は拒絶か受容か。   一時の淋しさと快楽を共有する相手として、彼は私を真っ当に扱ってくれたと思う。 しかし、大きな誤算があった。
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