not simple

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彼は立ち尽くす私を無視して、 出退勤用のPCを起動させている。 沈黙に堪えかね彼の背中に声を掛けた。 「今日は、もう上がり?」 声が上擦る。 彼は振り向きもせず「はい。」と短い返事をした。 彼の背中の線を目でなぞりながら無意識に自分の手首を強く握った。 ''質の良い消耗品'' 私の真っ黒な感情は、少し前まで抱いていた罪悪感を押しつぶした。 目の前にいる彼は熱を持った消耗品だ。 私の感情に寄り添うようにプログラムされ、私に錯覚をくれる。 我が身可愛い私はそれに手を伸ばす。 何も求めず何も問わず、都合のいい男という名の消耗品。
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