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それから、俺達は、度々二人で会うようになった。
別にただ会っているだけなのに、なんだか内緒の密会をしているようでドキドキした。
悟史くんは、人気のない場所で、たまに俺に指を絡ませて来た。
それだけで、俺の気持ちは、どうしようもなくときめいて、このまま何処かへ行ってしまいたい、とさえ思った。
「ねぇ、湘くん」
そんな時、悟史くんは、甘えるような声で、よく話しかけて来た。
「ん?」
わざと平静を装うのは、苦手なほうだったから、きっと、悟史くんは、お見通しだったんだろう。
「どっか、旅行にでも行きたいねえ。湘くん、好きでしょ?」
「え、あ、ああ。そうだね」
色んなことを意味するその誘いに、俺は、ドギマギと答える。
どうしてだか、いつも俺には、余裕がなくて、自分で情けなくなった。
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