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未だにその香水の銘柄は分からない。お香のような匂いからオリエンタル、エキゾチック、アジアンと評価の付く香水は試している。似た香水は沢山あった。でもあの僅かに残る甘さが無いのだ。だからセンセイは香水を作ってるのだと思う、調香。いわゆるオーダーメイド、もしくはブレンド。そうなると組み合わせは無限大で一生掛かってもセンセイの香水には手は届かないだろう。
色の焼けた砂壁にもたれて、缶ビールも2本目を開けた。
仮にその香水を手に入れたとして何になると言うのだ。センセイと同じ匂いをもたらす小瓶を手元に置いたら何をするというのか。その香りで横たわる自分を夜な夜な慰めるとか。
そんな馬鹿なことを考えてると携帯が鳴った。缶ビールを置いて携帯を拾い上げる。登録していない相手なのか画面には知らない11桁の味気無い数字が並ぶ。営業からは外れた、顧客では無いだろう。
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