やきもちと忠告

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私は新しくもらったデスクに荷物を置きながら、隣には九十九ちゃんがいる事にかなりご機嫌だった。 脱・むさくるしい男だらけの環境!! 九十九ちゃんは、白とピンクで統一されたデスク周りを整理していた。思わずお礼を言いたくなるほど女の子らしい。 それと比べ、私の机は統一性が無く、貰い物で構成されていそうな雑多なデスク周りだ。 (見習おう…。今週末はデスク周りの物を可愛くしちゃうんだから!買い物行こ!!) 「九十九ちゃーん、これから隣なんて嬉しい!」 「蓮先輩、私もです~!がんばりましょうね~!」 彼女は今でもプライベートでは蓮君とか蓮君先輩と呼ぶ。やはりお兄さんと同じ名前なのがどうにも面白いらしい。 凛さんはというと、私と九十九ちゃんの席から丁度対称に位置する場所に、環さんと隣り合わせで座っていた。 環さんは、凛さんの話に聞いていた通りの人で、とても今まで独身でいられたことが不思議なほど素敵な人だった。 前の親睦会を兼ねた飲み会の席でも、離れた所に座っていた上に、すぐに帰ってしまったこともあって、ゆっくりと顔を見るのは初めてだった。 荷ほどきや顔合わせ、そしてこれからの方向性を共有するためのミーティングで初日は終了した。 なるべく細かな内容と、各自の方向性を皆で共有する。 今、誰がどんな方法で、何をしているのかを把握しておくことは、グループでの力を上げる上でとても大切だ。 環さんはとても的確な指示を出しながらも、各自で必ず考えるべき場所を与える。 私たちのように学位を持っているというだけで、少しプライドの高い人間が集まるコミュニティでは、その力を発揮させる場面を与えるというのがとても大事でとても難しい。 一人一人をただの駒(ピース)にせず、きちんとブレーンとして扱うのは容易ではない。 それが自然と出来る環さんは、上に立つべき人だと思った。 そしてそれを隣で支える凛さんも、まぎれもない切れ者であった。 背中を任せ合っていると言うべきか、これを阿吽の呼吸と呼ぶのかは分からないが、補い合い強めあう、一切の無駄がない存在だった。 凛さんは私のたった一歳上にも拘らず、上司の片腕を努めている。 この事は私に良い意味でプレッシャーを与えた。 身近に良いお手本となる人がいる事はありがたかった。
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