いつの間にか

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クスクスとどこからか忍び笑いが聞こえてくる。その笑い声が聞こえてきてるか気にかけても無駄なので無視していると、その人はやってきてなんのためらいもなく私の背中に手を回してビリッとそれを破いた。 それは一枚の紙だった。セロハンテープで背中に貼り付けてあったのだ。あの忍び笑いがこれを差していると気がついても自然と怒りはわいてこない、どうでもいいみたいな諦めにもにた気持ちが強い。 張り紙を破いてくれた彼はフッと微かに笑ったあと、桐原さと前置きをして、 「これって自作自演だったりすんの? 『私は処女です』っておふざけにしてはやり過ぎじゃね?」 「私がしたわけじゃないので」 できれば、張り紙を貼り付けていった本人に聞いてほしい。別に犯人探しをしてほしいとは思ってないけれど、そんなこと聞かれると答えに困った。 「いや、やられてるの気がついてんならはがせよ。アホなの? お前」 「アホでもなんでもいいですから」 どうせ、困らないし。笑い物になるだけだし。 「あっそ。じゃあ、これは捨てとくからな、アホの桐原」 彼、夜原賢治(ヤハラ、ケンジ)の背中を見送った。
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