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オレにはそんなことを一笑に付していた時期があった。
よく知らないから気持ち悪いっていうのはよくある話だよな。
でもまあ、『彼』は美人っつーか、可愛いっつーか、顔の造作がとにかく完璧。笑った顔とかサイコーにいいんだろうなぁとか想像させる程表情とは無縁なんだけど。そこがまたクールでイイッていう!
「りーつしーきさんっ!」
子犬のようにくりくりした目の家賊がそこにいた。
「えへへぇー」
彼は数日前から親切に手伝いを申し出たりして、正直、つきまとってるようにいた。
過去にそういうご主人様はいたものの、なんとなく無碍にするのも悪いので、それとなく接していたら、
離れなくなった。物理的に。
彼は自分を見つけてはハグしてきたり、袖や裾、手を掴んでくる。
「律識さん、今日は何をするのかな?よかったら手伝うよ?」
「……今日も親切な心遣いありがとうな陽識。でも今日は特に用はないんだ」
「そうなんだー……残念だなぁ……」
それでも掴む手を離さない。……動きにくいのだが。
「あの……な、陽識」
「ん、何?」
「手、離してくれないか。作業の妨げになる」
「今何もしてないんだからいいじゃんー。ね、ね、オレの部屋に来ない?」
「?何でだ?」
「来てからのお楽しみ~」
ニコニコして引きずるように自分を連れて行く。
一瞬、驚愕の眼差しをかんじたが、気のせいだろうか。
「とうちゃーく!」
「……?特に何もなさそうだが……」
周りをキョロキョロ見回してみる。何回か陽識の部屋に入ったことがあるが、大々的に変化した形跡は見られない。
「えい」
「えっ……」
ベッドの方へと突き飛ばされた。突然の行為につい膝がつく。
「陽識、何をす――」
そして手首を掴まれベッドの上へ押し倒される。
「律識さん。オレさ、律識さんのこと、好きなんだ。
律識さんはオレのこと、好き?」
間近で見える顔。熱っぽく少し照れたはにかみ顔にこっちまで照れくさくなる。
「ねえ……」
どんどん近づく顔、動かない体。このままでは――
「くぉらぁぁぁ!!陽識ィィィッ!」
急に体が自由になる。入り口を見れば、憤怒の表情で仁王立ちの蓮識がいた。
「ちぇっ。またいつか奪いに行くよ」
そう言葉を言い残して蓮識に返された。
三角関係が生まれた瞬間だった。
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