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「律識さんっ!」
何故かメイド服を来た華奢な体つきしてるけど立派な男性の名前を呼ぶ。
振り向く律識さん。顔は超絶美人、マジ女。でも男。
軽く小首を傾げて、
「どうした?陽識」
声は低めで中性的。さっぱりした話し方が痺れる。
「特に用はないんだけど、やっぱ律識さん好きだなーって」
こっちがにこにこっと笑いかけると、向こうもうっすら微笑んで、
「そうだな」
と、頭を撫でる。年齢は近いはずなのに身長が律識さんより小さい所為か、俺の言動が幼い感じの所為か、よく撫でられる。嬉しいんだけど、ちょっとだけ……嬉しくない。
もっと、俺を見て欲しい。
子供扱いして欲しくない。
せっかく想い合ってるのに。
「……陽識?」
手を伸ばす。頭へ。律識さんの頭が俺の顔の前に来る。
「ねぇ。もっと俺を見てよ、律識さん」
律識さんの耳元に囁く。律識さんの体がビクリと動く。そして、恐る恐る顔を上げる。僅かに怯えの色が見える目に俺の顔が映る。
愛しくなって頭をぎゅっと抱き締める。腕の間から覗く大きな瞳がいじらしい。
「うふふ~」
なんとなく満足感がして頬擦りした後に律識さんを解放してみた。そしたら、おでこにキスしてくれた。
「機嫌、直ったか?」
はにかみ顔でのぞき込まれている。だんだん顔に熱が伝わって、なんだか一本取られた気分がする。
「むぅぅ……」
照れくさくなって額を手で隠して唸ってみるのは、まだまだ俺は子供ってことで。
律識さんは悪戯っぽい笑みを浮かべながら、さあ仕事仕事と言わんばかりにそそくさと去っていった。その頬が赤くなっていたのを見逃さない。やっぱり照れるもんだよね。うん……
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