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――気づけば、1人狭くも豪華な部屋にいた。
「……?」
床にはファンシーな色の厚手のカーペットが敷かれ、
壁は女の子が喜びそうな可愛らしい動物の壁紙。
部屋の中央――今私がいる地点――には小さいテーブルと揺れ椅子。その揺れ椅子の上に私はいる。ふかふかのクッションに埋もれたに近い状態で。
「…………」
もふもふしていて確かに気持ちは良いけれど。
「………………」
確実に私の部屋でないことは確かだ。そもそも私の趣味ではないし。
「……………………」
テーブルの上には美味しそうなお菓子と小型のデジタルカメラが。
「…………」
とてもとてもとてもいやな予感がする。
ガチャ。
ノブの回る音が。
キィィ……
扉が開く。
「ハァイ緒ちゃん元気ィ?」
登場のポーズを盛大に決めた科織がそこにいた。
「えーと、科織姉様これは一体なんですか…」
安堵すると同時に脱力感を覚える。
「いやーん、緒ちゃんそんな無表情な顔やムスッとした顔しちゃいやーん!女の子は笑ってなんぼよ?でも今日の緒ちゃんは一段とかーわーいーいー!!」
飛びついて頬擦りをかます科織姉様。
「……一段と可愛い?」
「あぁもうベリーキュートよー!食べちゃいたいくらい!つか食べたい」
「どさくさに紛れて何言ってるんですか姉様!?」
「そこらへんにしておくべきだと思うが科織」
「えー?この無茶苦茶プリティスウィーティハイパー可愛いと言っても言葉が足りない位の可愛らしさこれ極まれりと言わんばかりの可愛さをほめちぎって投げて撒いて何が悪いというの?」
「緒織が現状を把握していない顔をしている」
科織は急に何かを言ってくるのはいつものことだけど、いつも以上に変、かもしれない。
「り、律識さん……私、今どうなってます……?」
「そう思って持ってきた」
背の高い律識さんとだいたい同じくらいの姿見。
映っているのは――
萌メイドなブラウンのカチューシャに、ふんわりとした白いドレス。ドレスの首周りは赤い三角が環状に並び、体を取り巻く白いフリルはまるでデコレーションの生クリーム。足先まで白い靴に赤いアクセントと意匠をこらしている。
そして、手に持っているのは蝋燭型の明かり。
これは確かに美味しそうだ。
「まるで……ケーキ……」
「白の清純さが可愛さを引き立たせるけど、穢してもみたいよね!」
「ちょっと黙ろうか」
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