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艶やかな鴉の濡れ羽色の長い髪、程よい濃さと細めの柳眉、パッチリ開いた大きな丸い黒目、厚みがなく、思わず誘われる目の覚めるような薔薇色の唇、血管が透き通りそうな程に白い肌、抱くには心地良さげな狭い肩幅、締まった華奢な手足、筋肉も脂肪もあまりない胴体、人形みたいに表情が欠落し、人形みたいに物質くさい。
それが零崎律識の容姿だった。
「りっちゃんてさ、男物も似合わなくないけど、やっぱり女物の方がいいよね~。女の私でさえも嫉妬しちゃう」
女と言えばこれ!という象徴的見た目の科織がはしたなく椅子に座りながら述べる。
「そうか?」
しずしずと淡々と家事をこなす律識。
彼は奔拠血のメイド兼ハウスキーパーである。
清楚なヴィクトリアンメイド服に身を包んではいるが、デザインされたエプロンやメイドカチューシャはやはり現代の「萌え」文化の象徴を感じさせる。
「もっと太股出したり、腕出したり、露出増やしたりすればいいのにー」
ぶーたれながら椅子の背もたれに顎を乗せてがたがたと椅子を揺らす。
「どこのエロオヤジか、科織は」
その頭にチョップを食らわす。
「まあ、頼まれればやらないことはない、な」
微弱に微笑みながら、次の仕事のためと去る律識。
それを見送り、少々痛む頭をさすりながら拗ねたように、
「カッコ可愛いとか卑怯よ……」
と、愚痴る。
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