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思わず苦笑した。
千里の頭の中は、産むか堕ろすかどころか、既にその先の子育てのことを考えているのだ。
今、自分が何のために生きているのか――。
たまに考えても答えは出た試しがなかった。
将来の夢――。
そんなものはとっくに消え去っていた。
ならば――。
出来てしまった自分の分身の為に生きてもいいのかも知れない。
一生、千里を愛することが出来るのか――。
正直、それには自信がない。
現に今、俺の頭の中には小林の姿がチラついて仕方ない。
しかし、自分の分身に対してはまた別だろう。
生涯、切っても切れない縁で繋がって生まれてくるのだ。
「今はちょっとタイミング悪りいんだ。客に因縁付けられちまって立場が悪い。ほとぼりが冷めたら頼んでみるわ」
出産を肯定した俺の言葉に、千里は嬉しそうな顔を見せた。
「ふーん。でもあんまりのんびりもしてられないんだよ。予定日は来年の1月24日なんだからね」
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