初めての夜

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「・・・だから?私に素直にならせてどうしたいの?せっかく和馬にとって都合の良い女でいた私を、自分で変えようとしてどうするの?私だって、中を開けたら恋愛に狂って、前が見えなくなる女かも知れないでしょ?いつか和馬の大切なものを壊すかも・・・結果的に、自分で自分の首絞める事になるかもよ」 涙が引いた後の目に、ヒリヒリとした痛みを感じる。 和馬に放った「自分勝手」と言う言葉は、戒めのように自分の胸にも突き刺さっていた。 心のどこかで彼女を見下し、側にいる自分の方が優位だと思っていた。 和馬の言う、「賢い女」を必死に演じる事で、彼の心を繋ぎ止めようとしていた私。  物分かりのいい女を演じる事が私のプライド。 そして、中身は醜いただの女の執念。 「綾子のそう言う所が好きなんだ。優しさと、誰にも負けない女のしたたかさ。だから離したくなくなる。・・・お前は妻にはしたくない女だな。磨けば磨くほどに輝いて、最高の女になる」 和馬は、悪戯っぽい口調で言うと、私に手を伸ばし微笑みながら頬に触れる。 「妻にはしたくない女ってなに?失礼な男」 私は、頬に触れる彼の手首を軽く掴み睨みつける。 「馬鹿だな。最高の褒め言葉だぞ。妻には結婚したら子供を産んで、家庭を守って貰わなきゃいけない。男は妻に女の輝きなんて求めない。誰から見ても輝いた妻なんて、目が放せなくて心配で仕方ないだろ?だから、男は自分の手で磨いて輝く女を愛人にし可愛がる。 男にとって、可愛いがって育て上げたいのは妻じゃなくて愛人。自分好みのいい女に変えるのが男の喜び。そんな女を家庭に押し込めるなんて勿体無い」 和馬は、手首に絡んだ私の手をもう片方の手で掴み返し、不適な笑みを漏らす。 「何それ。男がみんな自分と同じ考えだとでも思ってるの?結婚しても、私をずっと愛人にしておくつもり?それが和馬の答えなんだ・・・最低な男だね」 呆れ果て、ため息を落とすと共に和馬の目を凝視する。 「俺は、自分に正直なんだよ。欲しいものは欲しい。だから、綾子がどうしても欲しい。 今日つくづくそう思った」 彼は私の腰に手を回し自分の元へと引っ張り上げる。 シーツが足に絡まり、私の上半身は和馬の上に覆い被さった。
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