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海外服飾ブランドから出てる香水で、大きなフレグランス売場のあるところなら置いてある店も少なくは無い。確かに似ているけれど、この香りとは違う。甘さが無いのだ。 「違いますよね……。フローラルさが無いもの」 「多分、何か別のフレグランスも併用されてるかと思いますが、うちではこちらの香水だけをお買い求めでして」 「何か心当たりは」 「さあ……。うちに扱いがないのは確かです」 私は溜め息をひとつついて、手にしていた瓶を店員に返した。再び店員は怪訝そうな顔をする。 プレゼントしたいと戻ってきた癖に何も買わない私を無躾な女だと思ったのだろう。私にとっては、あの甘さが無いと成り立たない香水なのだから意味が無い。
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