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虎汰辺りからチィのことを聞いたのだろう。
その顔は怖いくらいに真剣だった。
「チィのことだが大体は聞いた。だが本当に警察に届けなくていいのか?」
「それは俺も判断に迷ったが、警察内部に内通者がいる危険性がある」
「……なるほど、それほど厄介な相手ってことだな?」
虎治さんの問いに俺は無言で頷いた。
チィの存在が何故か厳重に闇に葬られていたのも考慮し、下した決断だった。
―――それに……、
“これ以上チィを辛い目に合わせたくはない”
それも理由の1つだが、危険と分かっていてチィを差し出すほど俺もバカじゃないつもりだ。
「わかった、飯の世話に困ったらこっちに寄越せ。腹いっぱい食わせてやる!」
ニカッと人の良さそうな笑顔を零す虎治さんに、俺は頭を下げその時は頼むと笑みを返した。
「煌騎くん、早くチィちゃんのトコに行ってあげて?さっきからずっと泣いてるの……」
「―――え、」
話が終わったとみるや優子さんが背中を急かすように押してきた。
それを聞いて俺は瞬時に顔色を変える。
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