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「―――チィッ!?」
慌ててチィの元に駆け寄ると、名を呼ばれ振り返った彼女の頬はまるで縞リスの頬袋のように膨れていた。
確かに瞳には涙を貯めてはいるが……。
言葉をなくして暫し無言で見つめ合う俺たち。
「煌騎っ!!コレ、美味しいよっ!!」
先に我に返ったチィが、満面の笑顔で手に持っている唐揚げを俺に突き出す。
呆気に取られながら周りを見ると皆、穏やかな笑みを浮かべていた。
後ろを振り返っても優子さんはシタリ顔でクスクス笑っている。
なんとなく状況を察した俺はチィの頭を軽く撫で、“よかったな”と声を掛けてやった。
すると嬉しそうにコクンと頷き、またモグモグと食べ始める。
そんなチィの両脇に手を入れるとヒョイと持ち上げ、今し方まで彼女が座っていた場所に腰を下ろす。
そして俺の膝の上にそのチィをゆっくり降ろした。
びっくりしたのは周りの方……。
鳩が豆鉄砲を喰らったみたいに皆、目が点になっている。
だが俺は気にせずチィに話し掛けた。
「その唐揚げ、そんなに美味いのか?」
「うん!煌騎も食べて?」
そう言ってチィは手に持った食べかけの唐揚げを目の前に差し出す。
俺は迷わずそれを食べた。
大口を開けて丸ごとペロリと口に放り込むと、チィはパチクリと目を見開く。
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