1036人が本棚に入れています
本棚に追加
.
「すまない、煌騎。チィがあんまり美味そうに食うから、つい……」
申し訳なさそうに口を開いたのは流星だった。
何かと思ってそちらを見ると、今度は虎子が謝罪の言葉を継いだ。
「私も注意力が足りなかった。チィが今までろくに食事も与えられてなかったというのを失念していたわ、ごめんなさい……」
「何を謝ってんのか知らねーが、こいつは腹いっぱいに食わせて貰って喜んでた。なら、それでいいじゃねーか」
くだらない事で謝るなと言うと、よほど気に病んでいたのか皆ホッと息を吐いた。
確かにテーブルの上に並べられた食事の減り具合を見ても、女が食べる量にしては少なすぎる。
これで気付けという方が無理なのだ。
腕の中で眠るチィの顔を見ると、幸せそうに微笑んでいた。
―――こいつが幸せならそれでいい。
穏やかな気持ちでその顔を眺めていると、和之が声を掛けてきた。
「煌騎、早速で申し訳ないんだが…警察で仕入れた件で急ぎ報告したい事がある」
「…………わかった、聞こう」
周りを見ても俺たち以外に客はいない。
閉店時間をとっくに過ぎているのだから当然と言えば当然だが、虎汰と虎子の実家ということもあり今は延長して貰っている。
誰に気兼ねすることもなく、俺たちは外では口外できないような内容の話をし出した。
.
最初のコメントを投稿しよう!