最強伝説

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. 安心させるように優しく背中を撫でらながら、彼が頷くのを見てやっと私は落ち着く事ができた。 ホッと息を吐くと背後で呑気にケタケタ笑う虎汰の声が聞こえる。 「煌騎はホント酒飲むと次の日の朝、人格が変わるよなぁ…。チィ、ご苦労さま♪」 「虎汰、てめぇワザとか……」 自己嫌悪に陥り、やり場のない怒りを持て余していた煌騎はその矛先を虎汰に向け、私の身体を離して彼に飛び掛かろうとした。 が、まだお酒が抜けきっていないのかスルリと躱されて逃げられてしまう。 「いつも犠牲になってたのは俺なんだから感謝して欲しいくらいだよ!いいじゃん、チィは可愛い女の子なんだからっ」 何とか部屋の入口付近まで逃げ遂せた虎汰は、一気にそう捲し立てるとべーッと舌を出して部屋を出ていった。 残された私たちは茫然と彼が出ていったドアを見つめる。 どうやら虎汰は煌騎がお酒を飲む度に翌日、私と同じ目に合っていたらしい。 部屋の中央に立つ彼は驚愕の事実を突き付けられて言葉を失っている。 「………マジかよ、んなの覚えてねーよ」 虎汰が出ていってから数分後、漸く正気を取り戻した煌騎は頭を掻きながら、それだけぼそりと呟いたのだった。 .
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