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その後も暫くは虎汰と虎子ちゃんとの攻防戦が続いたが、女の彼女に本気を出すこともできず、彼は泣く泣く私たちに席を譲ることになった。
そして向かいのソファに移動しようとした時、誰かがノックもなしにこの部屋のドアを開け放つ。
「―――ここは相変わらず賑やかだな♪」
そう言って入ってきたのは見た目20代後半ぐらいで、煌騎たちに負けず劣らず背の高い男だった。
彼は周りの空気も読まず、まるで何かを探すように部屋の中を無遠慮に見回す。
瞬間、父親と信じていた男の影と目の前の男の姿が重なって、ビクリと身体が強張った。
私は咄嗟に傍にいた虎子ちゃんにしがみ付き、ブルブルと震えてしまう。
「健吾さん!せめてノックくらいしてから入ってきてくれよっ!!」
怯え始めた私を見た虎汰はちょうど前に立っていたこともあり、守るように両手を広げて彼に立ち塞がってくれる。
お陰で私からは男の姿が見えなくなり、少しホッとして肩の力を抜くことができた。
「ん?あぁ、悪ぃ!小動物は警戒心が強いんだったな☆」
「呑気に言うなよ!せっかく前もってあんたが来るって教えて置いたのに、…チィ怯えちゃってるじゃないかっ!!」
虎汰の言葉に男は一瞬キョトンとし、次いで彼の肩口から私の様子を窺うように覗き込んだ。
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