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「―――え、ちょっと待って…チィ、健吾のこと知ってるのっ!?」
驚きと戸惑いの中、沈黙を破ったのは虎子ちゃんだった。
彼女は目を見開かせ、自分の横で放心状態になってる私に慌てて振り返る。
「いや、さっきの口振りだと健吾さんもチィのこと知ってる感じだったよな」
「あぁ、それから煌騎もな……」
冷静に状況を判断する虎汰に流星くんが頷いた。
そして二人は煌騎に鋭く怒気を含んだ視線を一斉に向ける。
「―――どういう事だよ、煌騎っ」
「……何もかも知ってて、俺たちに黙ってたっていうのかよっ!?」
声を荒げる彼らの姿を見て私は息を飲んだ。
時々ケンカはするけど普段はとても優しく、賑やかな明るい人たちなのに今は見る影もない。
そこにいたのは怒りに我を忘れた猛獣、まさしく“モンスター”だった。
「―――待て!先走るな、二人共っ!!」
そう言って間に入ったのは和之さんだ。
彼は少なからず煌騎から情報を得ているのか、他の皆よりは冷静だった。
「―――けどっ!? 」
「何を熱くなってんのか知んないけどっ」
尚も突っかかろうとする二人に、脇で静かに傍観していた朔夜さんが口を開く。
そのどこか冷めたような声音に、虎汰たちの動きがピタリと止まった。
そんな二人を気にも留めず、朔夜さんは無表情に言葉を続ける。
「……煌騎は最初からチィのこと、知ってる風だったよ?」
そう言って“昨日の事なのにもう忘れたの?”と付け加え、嘲笑うように口端を上げた。
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