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私には縁遠く、された経験はなかったけど世の父親が娘に向けるような、そんな眼差しだった。
それは何だか恥ずかしくもあり、嬉しくもあるものなんだなと思った。
するとちょっと不貞腐れ気味に虎汰が横から口を出す。
「チィは初めから煌騎にだけは懐いてたよ」
そう言ってプイッとそっぽを向く。
何に対して拗ねてるのかはわからなかったが、確かに彼が言うように煌騎には初めから恐怖を感じなかった。
だって私の中で彼は出会った時から特別だったから……。
ただ『こうちゃん』に似ているというだけではない何かが、私に煌騎を素直に受け入れさせた。
後に虎子ちゃんに話せばそれが“一目惚れ”なのだと教えられる。
「……そっか、でもそれを聞いて安心したよ。最初は彼女をこんな男ばかりのたまり場に置くのは忍びなかったが、煌騎がいれば問題なさそうだ」
「いや、その事だがやはり当初の予定通りチィを預かって欲しい」
「―――えっ!? 」
健吾さんが胸を撫で下ろしたのもつかの間、煌騎が首を横に振って彼に私を託すような発言をする。
その場にいる誰もがその言葉に耳を疑った。
もちろん私もその中の一人で、ただ茫然と彼を見ていた。
「なんでだよ、煌騎っ!? チィを手放す気かっ!?」
「ダメだよ、そんなのっ!俺は絶対に認めないっ!! だって、俺たちで守ってやるって言ったじゃんっ!!」
興奮したように流星くんも虎汰も憤りをそのまま煌騎にぶつける。
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