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「どうした、チィ…何故イヤがるっ!?」
煌騎は困惑気味に首を傾げるも、尚ビニールの袋を口元に押し付けようとする。
けど私は彼の胸元にしがみ付いて必死に抵抗した。
「………い…やぁ、……や…だ…よぉ……」
まるで幼い子どものように愚図り、苦しくてもう意識が遠退きそうなのに弱々しく首を振り続ける私。
どうすればいいのか途方に暮れた彼は周りを見回すが、皆も動揺の色が隠せず狼狽えるばかりだった。
「………チィ、頼む。コレを口に当てさせてくれ!直ぐに呼吸が楽になるからっ!! 」
「……ぃ…やぁ…、煌騎ぃ……捨てない…でぇ……ヒック、離れていっちゃ……や…だぁ……っ」
「……………チィ、」
苦しい呼吸の中、途切れ途切れだったけどやっと言えた想い……。
それを聞いて煌騎は言葉をなくす。
でも彼に伝えたいのはこれだけだった。
私は煌騎から離れるのが死ぬよりも怖い。
彼は私にとって漸く見つけた『生きる希望』で、『死ぬ為の理由』だから……。
もう何もない自分に戻るのはイヤだと思った。
だから懸命に煌騎にしがみ付き、離されまいと首を横に振る。
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