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少しの合間の後、頭上で煌騎の大きな溜息が聞こえた。
瞬間、ビクリと肩が震える。
私がみっともなく縋り付いたから、呆れられたのかもしれない。
今度こそ捨てられると覚悟した時、彼の優しい声音が降ってきた。
「…………わかった、お前を傍に置く。だからチィ、コレを口に当ててくれっ」
それは懇願にも似た声だった。
とても信じられなくて慌てて顔を上げると、根負けしたような表情をした煌騎の眼差しとぶつかる。
「……いい…の?私、…傍にいて……」
怖々と聞き返せば彼は優しく微笑んで頷いてくれた。
私は安堵の息を吐き、促されるままビニールの袋を口に当てる。
もう意識も朦朧としていたが、ソレで呼吸をすると瞬く間に楽になった。
私が通常の呼吸を取り戻す頃には周りの皆も落ち着き、それぞれの席へと戻っていく。
「……もう、苦しくはないかい?」
医師である“健吾さん”が床に膝を付け、私の首筋に手で触れて軽く触診しながら尋ねた。
それに私はコクンと頷いて答える。
「ん、よかった。でもびっくりしただろ?急に呼吸が難しくなって……」
「うん。私、病気なの?」
「まさか!一般的には過呼吸という名で知られているけど、過度なストレスや不安から引き起こされる発作なんだ」
大事ないと診断した彼は、私の頭を優しく撫でると自分の席に戻っていった。
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