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朔夜さんの隣りに腰を落ち着けた“健吾さん”は深い溜息を吐くと、少し睨むように煌騎を見据えた。
「彼女は今まで辛い環境にいただろうから、言動には注意を払うようにと言って置いた筈だが?」
静かな口調だったけれど怒気の含む彼のその声色に、知らず私の身体もビクンと跳ねらせる。
すると煌騎が透かさず背中を撫でてくれ、直ぐにその緊張は溶けてなくなった。
「………すまない。チィの為にはここに置かない方がいいと思ったんだ」
そう言って彼は優しく私を見下ろす。
その瞳には罪悪感が滲んでいて、胸を締め付けさせた。
「ここは俺を含め、血の気の多い奴ばかりだ。ケンカも耐えない。その度にこいつをびくびくさせるより、あんたの所へ預けた方がっ―――…」
「―――ちょっと待てよ、煌騎っ!」
その時突然、流星くんが言葉を遮って声を荒げた。
彼は納得がいかないという顔で煌騎を睨みつける。
「そういう事なら何でもっと早く言ってくれなかったんだよっ!? 」
「そうだよ!俺たちの所為でチィの気が安まらないって言うなら、直す努力だって何だってするっつーの!!」
虎汰も立ち上がる勢いで抗議する。
その迫力に少し驚いたが、それよりも私の所為で煌騎一人が悪く言われているような気がして、とても悲しくなった。
両目に涙を溜めて俯き、自己嫌悪で下唇をぎゅっと噛む。
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