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けれど虎子ちゃんのお陰で険悪な空気は払拭され、また和之さんが煎れてくれたコーヒーも彼らの興奮を鎮める手助けとなった。
一通り配り終えると彼は最後に私の所にきて床に片膝を付き、真っ白なマグカップを手渡してくれる。
「チィのはホットチョコにしたからね♪飲むと落ち着くよ」
そう言って和之さんはニッコリ微笑む。
私も釣られて笑って頷き、手渡されたマグの中を覗き込んだ。
途端に温かい湯気がぶわっと顔を優しく包み込み、それと共にとても甘い匂いが鼻孔を擽った。
初めての香りに胸がドキドキする。
口にするのがもったいない気がして飲むのを躊躇っていると、煌騎が苦笑を浮かべながらも飲んでみろと言う。
和之さんも笑顔で飲むよう薦めてくれるので、思いきってコクンと一口飲んでみる。
すると口の中に甘い味がポワンと広がり、心も身体もポカポカと温かくなった。
「―――美味しいっ!煌騎、コレ凄く美味しいよっ!?」
「そうか、よかったな」
「うんっ♪和之さん、ありがとう!」
感激して興奮気味に煌騎を見れば彼はくしゃくしゃと頭を撫でてくれ、それからこんなに美味しい飲み物をくれた和之さんにもお礼を述べる。
彼は嬉しそうにまたニッコリ笑うと、ゆっくり自分の席に戻っていった。
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