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びっくりしてその光景を見ていると、ふと流星くんと目が合った。
でも彼はアッと口を開けたかと思うと気まずそうに目を逸らし、小さくゴメンと呟いて消沈したようにソファに座る。
その様子を見て朔夜さんがクスリと笑った。
「お約束すぎ……やっぱお前、単純だよな……」
「うっせー!ほっとけっ!!」
彼に揶揄されて流星くんは拗ねたようにそっぽを向く。
でも先ほどの剣幕は嘘のように消え、私の知る彼に戻っているのでホッとした。
「……ねぇ、じゃあチィは何で健吾を知ってるの?」
ことの収拾がつくのを待ってから、虎子ちゃんが私を見ながら静かに聞いてきた。
何らかの事情を知る男二人は無言を貫き通したまま口を開かない。
なら、私から何か情報が引き出せないかと思ったのだろう。
周りの皆も期待の眼差しでこちらを見ていた。
が、私は尋ねられて初めて自分のことも含め、本当に何も知らないのだと気付かされる。
悲しくなって何も言えず俯くと、煌騎が優しく頭を撫でてくれた。
「ムリに聞かないてやってくれ。彼女は今まで生きるので精一杯だったんだ」
そう言って“健吾さん”も私を庇ってくれる。
二人とも優しくて胸がぎゅっとなった。
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