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私は“外”へ出て彼らに保護されてからずっと守られてばかりだ。
けど、このままじゃいけないと思った。
―――知ってることは話さないと……。
意を決して顔を上げると、皆の顔を見回した。
「……あ…あの、私……健吾さん?を知ってるんじゃないの。『ケン兄ちゃん』は私の夢の中に出てくる架空の人で、よく似てたから夢と混同しっちゃって……」
「えっ!? じゃあ、まさか煌騎のこともっ!?」
驚いてそう尋ねる虎汰に私はう、うんと躊躇いがちに頷く。
すると皆は益々わからないといった感じで一気に脱力し出した。
自分の話したことが満足の得られる情報ではなかったようで、ちょっとショックだったが本当のことだから仕方がない。
肩を落として落ち込んでいると、煌騎が不思議そうな顔をして私を見ていた。
「……ん?…煌騎?」
「………いや、どうして架空の人物だと思ったのかと思ってな」
首を傾げると彼は不思議なことを言う。
でもそんなこと考えるまでもなくわかり切っていた。
「だって、いつも夢の中には私がもう一人いたから……」
そう、私が心の拠り所にしていた夢には必ずもう一人の自分がいた。
そんなの現実にはあり得ない。
だからアレは夢……。
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