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それに何といっても彼は『ケン兄ちゃん』に瓜二つなのでちっとも怖くない。
怪我の具合を診るからと寝室に二人きりにされたが、健吾さんは終始私を笑わせてくれる。
リビングに戻る頃にはすっかり彼と打ち解けていた。
「なんか煌騎も健吾さんもズルいよな……」
「そうだよ!夢に出てくる登場人物に似てるからって、無条件にチィに慕われてさ……」
納得のいかない流星くんと虎汰はさっきからずっとムクれたままだ。
煌騎の膝の上に再び戻ってくるなり、二人にそう愚痴られた。
だけど彼らの真ん中にいる虎子ちゃんが二人の背中をペシッと容赦なく叩く。
「男の嫉妬は醜いわよ!いい加減グチグチ言うの止めなさいっ!!」
「…………お前ら、ガキみたい」
フッと朔夜さんにまで鼻で笑われて返す言葉もなく、流星くんも虎汰もしゅんと落ち込む。
私は何だか可哀想になって、声を掛けてあげたいと思うのだけどいい言葉が浮かばない。
一人オロオロしていると、和之さんに笑顔でこいつらは放っといていいからって言われた。
「―――それよりも!あの話はどうなってるのっ!? 和之さんも朔夜くんも、根回しはもう済んでるんでしょ!?」
「あぁ、後は隣りの人に承諾を貰えれば完了……」
興奮気味の虎子ちゃんにいつでも冷静な朔夜さんが淡々と答える。
でも意味不明な会話に私が首を傾げていると、ソファに戻った健吾さんが苦笑を浮かべて“あぁ、あの話か…”と呟いた。
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