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「いいよ。チィの身元保証人、俺が引き受ける」
そう健吾さんはまるで荷物を預かるような軽い口調でサラリと言った。
あまりの驚きに私は目が点になる。
「―――え、えっ!? ど、どういう意味…です、かっ!?」
状況が呑み込めずキョロキョロと周りを窺うが、皆は既に健吾さんの了承が得られ歓喜に湧いていて私の声など届かない。
途方に暮れていると隣りの煌騎がクスリと笑い、詳細を事細かく教えてくれた。
朔夜さんは何もない私の為に役所にハッキングし、一晩掛けて戸籍や住民票なんかをいろいろ作成したらしい。
けれど未成年者をそのまま一人の枠に納めるのは不自然極まりないので、誰かの戸籍に入れてしまおうということになり、それに白羽の矢が立ったのが健吾さんだった。
彼は独身だし、地元の人間ではないので誰からも怪しまれないだろうという理由で選ばれたそうだ。
「帰る場所を見つけるまでの仮の戸籍だけどね……」
事も無げに朔夜さんは呟いたけど、それだけの作業をするのにどれだけの時間と労力を費やしたのか、想像も出来ない。
きっと彼だけじゃない。
ここにいる和之さんや流星くん、虎汰や虎子ちゃんも私の為にいろいろと動いてくれているのだろう。
何気なく説明してくれている煌騎だって……。
それを思うと胸がギュウウッと苦しくなった。
「………あり…がと……」
両目いっぱいに涙を溜めてお礼を言うと皆は一瞬驚いた顔をして、でも次の瞬間にはフッと表情を崩して笑った。
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