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一度だけ“お父さん”に行きたいと泣いて頼んだことがある。
でも言った瞬間、もの凄く後悔した。
何故なら次の瞬間には私の身体は宙を舞い、地下室の壁に叩きつけられていたからだ。
そして血を吐いて気を失うまで、“お父さん”に蹴られたり殴られたりした。
『お前ごときが学校に行きたいだとっ!? 何様のつもりだッ!!』
そう罵られながら……。
その後、手当ても何もされずに放置され、泣きながらもう絶対に自分から望みは言わないと心の中で誓った。
―――でも本当は“学校”に行きたかった……。
昔のことを思い出してしまったからか、両目からは勝手にぽろぽろと涙が溢れてくる。
早く止めなくちゃと思ってもソレは直ぐには止まってくれない。
両手で瞼を擦ろうとしたら煌騎にそっと腕を取られ、動きを制止された。
「………ムリに止めなくていい」
そう言って背中を優しく撫で、私の身体をぎゅっと抱き締めてくれた。
やっぱり煌騎の腕の中は落ち着く。
私はもう彼なしでは生きられない。
おずおずと彼の背に腕を回しながら瞳をゆっくり閉じる。
暫くすると眠気を誘うように背中をぽんぽんとされ、抵抗する間もなく私は夢の世界に吸い込まれていったのだった……。
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