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《煌騎side》
「もしかしてチィ、寝ちゃった?」
虎汰がソファに座りながら俺の腕の中を覗き込む。
こちらの席に近い流星も覗き込んで確認し、“あぁ、寝むってる”と苦笑を浮かべて答えた。
それを聞いて皆は残念そうにしたが、ゆっくり休める為にワザと眠らせようと仕向けたのだ。
眠って貰わなければ困る。
さっきまでこいつはブルブルと震えていた。
皆に悟られまいと必死に抑えてはいたが、おそらく思い出すのも辛い記憶が甦っていたのだろう。
1日や2日でこいつが抱えているもの全てを払拭できるとは思っていないが、何とももどかしい限りだ。
俺はガキの頃“守る”と誓ったのに……。
今日、健吾に会わせてやっと確信を持つことができた。
こいつは“アイツ”だ……。
だが既に未来が決まっている俺に何ができる?
例えどんなに納得がいかなくとも親父には絶対に逆らえない。
いずれ愛音と結婚させられ、組を継ぐことになる。
親父はきっと真実を受け入れない。――いや、受け入れ“られない”のだろう。
何故ならそれを受け入れたが最後、組の面子が立たなくなるからだ。
とにかく、今は向こうの出方を待つより他ない。
俺に偵察を入れたあの“二人”、アイツらも所詮は末端にすぎないだろうし、上にはかなりの大物が潜んでいるハズだ。
想像も出来ない程の大物が……。
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