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多少の“祭り感覚”なのは否めないが、忠告したって素直に聞く奴らじゃないのは重々承知している。
だからこの際、その事には目にを瞑ることにした。
チィが目覚めるから声を抑えろとだけ注意し、後は好きにさせる。
「……若いっていいね♪俺も微力ながら力を貸すからさ、出来ることあったらいつでも言って?」
そう言って健吾が静かに席を立ち、帰り支度を始めた。
早朝からこんな所に顔を出してはいるが、奴も今はれっきとした社会人だ。
今から仕事場である個人病院に向かうのだろう。
すると透かさず俺以外の全員が立ち上がり、健吾を見送りに入口へと向かう。
「健吾さん、また今度バイクの話し聞かせて下さいよ♪」
「あぁ、暇な時にでもな」
「ちぇ~、あんたいっつもそればっかで忙しそうにしててちっとも相手してくんねーじゃんっ」
「あはは、ワルいワルい☆」
さっきの剣幕は何処へやら……。
ドアの前で健吾を取り囲み、和之を筆頭にバイクの話で盛り上がる虎汰や流星たち。
ウチのチームは何故か全員、奴をバイクの神と崇めて崇拝している。
去年の暮れにチーム内No.1の運転技術を誇る和之が勝負に負けて以来、誰もこいつに逆らうことがなくなった。
俺らの代の面子は大半が走るのを目的に入ったような連中ばかりだ。
かくいう俺もその中の一人だが、やはり走りが上手いとそれだけで憧れの対象になるのだろう。
暫く和之たちに捕まって長々と話していたが、開院の時間が迫っていたこともあり健吾は慌てて帰っていった。
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