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奴が帰ったのがよほど名残惜しかったのか、部屋には暫し静寂が訪れる。
だがバイク好きの和之や虎汰などが気落ちするのはわかるが、まさか朔夜までが落胆するとは思わなかったのでさすがの俺も驚く。
「ちょっと!健吾が帰ったからってナニ落ち込んでるのよっ!! これからそんなヒマなくなるくらい忙しくなるんだからね!? しっかりしなさいよ、あんたたちッ!!」
あまりに締まりのない連中に喝を入れるべく虎子が大声を出す。
けどその声の所為でチィの身体が一瞬だけビクッと跳ねたのを見て、慌てて口を掌で覆う。
「もうっ!チィを起こすトコだったじゃない!!」
小声で八つ当たり的に隣りへ座った虎汰の背を叩く虎子。
傍若無人な言いグサに奴は眉間に皺を寄せたが、こちらをチラリと見て黙り込んだ。
チィに気を遣ったのと妹には逆らえないのと、半々といったところか……。
面白い兄妹だと思いながら俺はチィを抱えたままゆっくりと立ち上がる。
「何処へ行くんだよ、煌騎ッ!?」
流星が慌てて声を掛けてきた。
答えるのがメンドーだったので目線で寝室を指すと、奴は何故かホッと息を吐く。
「なんだ、チィを休ませるのか……」
イチイチ声を掛けてワルかったと軽く謝罪して、流星は寝室のドアを開けに一緒に席を立つ。
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