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そして開ける際に“ついててやれよ”と言って、俺をチィごと中へ押し込めてパタンとドアを閉めた。
奴の気遣いは俺にではなくチィの為に向けられたものなのだろう。
さっきの発作は俺も驚いたが、流星は根っからの小動物好きだからか結構気にしているようだ。
チィが安心して目覚められるよう俺を残していったに違いない。
まるで卵から孵った雛鳥のようだと思った。
チィは俺から離れるのを極端に怖がる。
おそらくそれは育ての親がこいつを精神的に追い詰め、自分には何の価値もないと教え込んだ所為だ。
地下室で長く飼い慣らす為に……。
だが腑に落ちない点が幾つかある。奴らは何故チィを殺さず、生かしてワザワザ育てた?
目的が達成されたのなら、後は邪魔なだけのこいつを処分する方が何かと楽だ。
―――殺せない理由がある、ということか……?
益々深まっていく謎に頭を抱えながらふと横を見ると、幸せそうに眠るチィの顔があった。
今まで辛い経験をしてきたのにそんなこと微塵も感じさせないくらい、穏やかに眠る姿に荒れた気持ちが瞬く間に和んでいく。
この寝顔を、何としても守りたい……。
いつまでもこいつが笑っていられるように、俺の持つ力を全て注ごうとチィの寝姿にそっと誓った。
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