1036人が本棚に入れています
本棚に追加
.
納得はいかなかったけど、和之さんの邪魔になると聞いては素直に従うしかない。
煌騎に促されてドアの前まで行くが、さっき感じた違和感を思い出してピタリと脚を止めた。
「そだ!和之さん、今日はお手伝いしてくれる人いないの?」
「あー、今日の奴らは揃って寝坊したらしい。でも朝食の時間には間に合わせるから心配しないで♪」
和之さんは苦笑気味にそう言う。
その顔は大して困った風ではなかったけど、私はある提案を思いついてパアッと顔を明るくさせる。
「あ、だったら―――…」
「―――さぁっ、チィ!向こうへ行くぞっ」
「え、え、まだ何も言ってないよ~っ」
せっかくお手伝いできるチャンスだったのに煌騎に間髪入れず遮られ、しかもひょいと米俵のように肩へ担がれた。
そして有無を言わさず強制退場させられる。
未練がましく上から和之さんを見るけど、爽やかな笑顔で見送られたのではもう黙るしかない。
ただ扉が無情にもパタンと閉じられるのを呆然と見ていた。
「どして?なんで私、手伝っちゃダメなの?」
そっと三人掛け用のソファに降ろされながら、ぼそりと独り言のようにだけれど抗議の声を上げる。
せめてもの抵抗のつもりだったけど、そんなの煌騎にはまったく効かなかった。
.
最初のコメントを投稿しよう!