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重力に勝てず私はそのままぽてっと座席の上に転がってしまい、反動で少し間を置いて座っていた和之さんの肩にぶつかった。
「あっ、和之さんゴメンナサイ……」
「ううん、俺は大丈夫だよ。チィは大丈夫?」
「う、うん、大丈夫。ありがと……」
慌てて謝るけど彼はにこやかに笑って許してくれて、しかも抱き起こして私の心配までしてくれる。
やっぱり和之さんは優しいなと思った。
でもホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、前方に座る虎汰が凄い剣幕で虎子ちゃんを非難し出す。
「おいっ、虎子ッ!チィを乱暴に扱うなよッ!!」
「ハァッ!?……あのねぇ、これくらいでチィは壊れやしないわよ!過保護なのも度がすぎると嫌われるよ?」
「むっ!? …うぅ~~~ん、」
私に嫌われると聞いて咄嗟に口を噤んだ虎汰は、低い声で唸り出してしまった。
言い返したいけど出来ないから悔しいのだろう。
そんな彼を無視して虎子ちゃんは澄ました顔で、空いている和之さんの隣りに腰を下ろした。
当然だがそこは私の隣りでもある。
さすが虎子ちゃんだ……。
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