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その時、煌騎の表情が険しいものになったのにも気づかず、私は彼女の言葉をそのまま信じてしまう。
そして言葉巧みに話を逸らされ、気がつけばまた学校の話題で夢中になっていた。
「アイツらが害がない…ね、フンッ」
ぼそりと煌騎が消え入りそうなほど小さな声で呟いたけど、それは完全に聞き逃してしまう。
学校に通えることがあまりに嬉しく、この時は自分の置かれている立場も忘れて少し浮かれ過ぎていたのだ。
もっと私に考える力があったなら、これから起こる事を未然に防げたかもしれないのに……。
何も知らない無知な私は、この後も皆に色々と迷惑を掛け続けることになる。
「チィ、そろそろ学校に着くぞ。降りる準備をしておけ」
不意に外に目を向けた煌騎が言う。
声に反応して振り返ると、窓の外に開放された大きな門が現れた。
その奥には真っ白な建物も遠くの方に見える。
「わぁ、…おっきいねぇ……」
「一応マンモス校だからな。校内では絶対に虎汰か虎子の傍から離れるなよ?」
歓喜の息を吐くと煌騎は私の頭をぐしゃぐしゃっと撫でた。
学校では学年が違うから彼とは一緒にはいられない。
だからか昨日から同じ事を繰り返し私に言って聞かせていた。
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