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本当は笑うのも辛い。
上手く呼吸ができなくて立っているのもやっとだ。
それでも煌騎とずっと一緒にいたかったから、誰にも悟られないように頑張った。
「茨 チィさん…ですね?私、生徒会会長を務めてます。藤嶺 薫子(フジミネ カオルコ)と申します。初めまして」
「………ぇ……」
気づくといつの間にか虎子ちゃんと同じくらい背の高い女の子が、男女数名を引き連れて私の目の前に立っていた。
先頭に立つ彼女はまるで日本人形のように手入れの行き届いた綺麗なストレートの黒髪をしており、肩に掛かった腰まである髪を後ろへさらりと払えば花の香りがふわりと辺りを漂う。
ボーッとしていた私は今の状況がわからず、唐突に話し掛けられて返事を返すことも忘れ、藤嶺と名乗る彼女の顔を見上げた。
―――目が、笑ってない……。
藤嶺さんの笑顔はユリの花を思わせるほど上品で美しいのに、何故か私に向けられる瞳は氷のように冷たかった。
私、何か気に障る事でもしただろうか……?
―――あ、まだ挨拶を返してないッ!!
そう気づいた私は慌てて頭をペコリと下げる。
「えと、あの…初めまして、茨 チィです。よろしくお願いします」
何がよろしくなのかは自分でもよくわからなかったが、とりあえず昨夜練習した通りの挨拶をした。
身体が震え上がって上手く声が出せず、蚊の鳴くようなか細いものになったけど、これが今の私の精一杯だから仕方がない。
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