学校は危険がいっぱい

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. 「煌騎さま、茨さんを私にお預け下さいますか?生徒会が責任を持って彼女をご案内しますわ」 藤嶺さんは余ほど彼に話し掛けることが嬉しいのか、声のトーンが緊張で少しばかり高い。 頬も赤く染め、憔悴しきったような表情をしている。 けれど煌騎はそんな彼女には興味がないようで見向きもせず、校舎の方を見ながら即座にその申し出を断った。 「いや、その必要はない。理事長室には双子に送らせる」 「―――えっ!? そ、そんな……」 藤嶺さんは大きく目を見開いて愕然とする。 まさか断られるとは思っていなかったみたいだ。 周囲も驚いた様子でざわざわと騒ぎ始める。 後で知ったのだけれど、この学校では生徒会が中心となって転校生の世話をするのが習わしらしい。 私の横で虎子ちゃんはしたり顔になってクスクス笑い、ショックを隠しきれない彼女にキッと睨まれていた。 「どうしてっ!? 納得がいきませんわ!虎汰さまはともかく、どうしてこのような者に彼女をお任せになるのですかっ!?」 プライドが傷ついたのか藤嶺さんは虎子ちゃんを睨みつけたまま、必死になって煌騎に言い募る。 でもどんなに言い募っても彼の目線は校舎に向いたまま、首も縦には振らなかった。 「お前が虎子をどう思ってようと関係ない。俺に指図するな」 煌騎は面倒くさそうに言うと彼女を一瞥し、それから私たちに向かって静かに“行くぞっ”と声を掛けて歩き始める。 心なしか彼からは不機嫌なオーラが滲み出ていた。 .
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