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「あれ?もしかしておチビちゃん具合が悪いのかな?」
よろける私に紫色の髪をした男が下卑た笑みを浮かべる。
すると周りの男の子たちもニヤニヤと笑い始め、私を追い詰めるようにジリジリと距離を縮めた。
「……や…だ、こっち来ないでッ!! 」
その場にしゃがみ込んで首をフルスルと振り、彼らを懸命に拒絶する。
今すぐこの場から逃げ出したいのに、退路を断たれてしまってはどうにもならない。
あまりの恐怖から両目いっぱいに涙が溢れた。
けれどここで泣けば相手の思う壺だと思いグッと堪える。
「おい、お前ら。ちっこいのが更にちっこくなってんだろ?白銀んトコの大事な姫さんなんだから怖がらせるなよ~」
紫色の髪の男はまるで私を嘲笑うように再び口角を弓形に上げた。
だが彼の瞳は笑ってなどいない。
氷のように冷たく、蔑んだ眼差しでこちらを見ている。
それを見た瞬間、
心の底から怖いと思った。
私はこの人に殺される……。
何故か直感的にそう感じた。
この眼を私は過去にも一度見たことがある。
かつて私が“父”と呼んだ人も、こんな風に私を見ていた。
―――あぁ、やっぱり私の目の錯覚ではなかったんだ……。
冷酷な眼差しをする紫色の髪の彼を目の当たりにして漸く確信する。
実の父と信じた人から向けられていた目線の正体を……。
あれは明らかな殺意だ。
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