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「―――うっ、うぇ……」
哀しみのあまり嗚咽が込み上げてくる。
どうして人は信じ難い真実を目の当たりにするとこうも弱くなるのだろう。
瞳に溜まった涙は容易く決壊し、ポロポロと私の頬を伝った。
驚いたのは周りを取り囲む男たちの方だ。
「うわっ!何、こいつッ!? 突然泣き始めたぞっ」
「ナニナニ?俺たちまだ何もしてねーよな?」
急に号泣し出した私に男たちは一瞬怯んで数歩退く。
そして口々に“意味わかんねーしッ!!”と吐き捨てる。
でも今はそんなの構ってられなかった。
父に愛されていないのはもうずっと前からわかっていたけど、まさか殺意まで抱かれていたなんて……。
哀しみに胸が押し潰されそうになる。
けれど更に追い打ちを掛けるように、紫色の髪の男がイライラ感を滲ませた口調で話し掛けてきた。
「あのさぁ、ナニ悲観しているのか知らないけど俺の存在忘れてない?おチビちゃん」
そう言うと彼は私の肩を掴んで強引に自分の方に向かせ、無理やり顔を覗き込んでくる。
が、その掴んだ腕があまりに痛くて彼と目を合わせる前に顔を顰めた。
「ふーん、いいじゃん♪その苦痛に歪めた顔、モロ俺の好み☆」
腕を掴んだまま男は満足そうにニヤリと笑う。
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